研究発表抄録 |
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001 | ランチョンセミナー 日本メジフィジックス | |
「放射線技師の役割」 | ||
門前 一(もんぜん はじめ) | 大津赤十字病院 放射線部 | |
【概要】近年、医療機器は長足の進歩を遂げ、非常に高度な検査が要求される反面、私たち医療界、診療放射線技師を取り巻く環境は、すべてにおいて厳しいといっても過言ではありません。このような時代背景の中で、私たち個人、組織にどのような改善、努力が求められているのでしょうか。滋賀県放射線技師会ではJICAの草の根事業を受託して3年間国際交流事業を展開してきました。事業を行ってきて、県内技師の連携が強固なものになった上、外から自施設を再見することによって、新しい多くの知見が得られました。放射線部に課せられたテーマはどの施設でも山積しており、技師会、技術学会等の学会を通じての連携、フランクな意見交換の場の重要性は増してきています。また、企画力如何で職制への評価が大きく変わる時代になってきています。一方、病院の評価や改善すべき項目を議論する上で放射線部の果たすべき役割は大きく、その責務は大きいといえます。組織人として何に取り組み、何をすべきなのか、企画、立案、遂行してきた内容等の評価を踏まえ、話題提供していきたい。 |
002 | ランチョンセミナー エーザイ | |
「肝臓領域におけるダイナミックCTについて」 | ||
久本圭 史郎 | エーザイ株式会社 医薬部造影剤領域室 | |
【概要】近年、多列化をはじめマルチスライスCTが格段に進歩しており、時相を狙ったダイナミックCT撮影が容易となっている。さらに保険点数の加算などの後押しもあり、多くの施設にマルチスライスCTが普及されており、ダイナミックCT撮影は一般的な撮影となっている。造影CT検査において最も多い撮影部位は腹部であり、その中でも肝臓領域のウエイトが最も高く、臨床医の治療方針決定などにおいて、造影によって得られる画像情報は欠かすことができない。 肝臓は肝動脈および門脈の二重血管支配を受けており、肝臓領域のダイナミック撮影においては適切な造影剤投与と撮影タイミングが求められる。現在、肝臓領域のダイナミックCT撮影においては至適造影法が提唱されており、「体重に応じた総ヨード量の投与」、「30秒程度の注入時間固定」の2つの基本ルールが一般的になりつつある。この2つの基本ルールにより、原則的に常にTDC(Time Density Curve:時間濃度曲線)が同一となり、再現性が良い撮影ができるようになった。 肝臓領域のダイナミックCTにおける必要なヨード量は、520〜600mgI/kg程度が一般的である。最近、イオメプロール350濃度製剤(製品名:イオメロン350)において、肝臓領域のダイナミックCT撮影において630mgI/kgまでの使用が承認され、体重に応じた投与量決定という 至適造影法の概念が初めて添付文書に反映された。さらに初めての高濃度高用量製剤となるイオメロン350濃度135mL製剤も併せて承認され、年内には発売される予定である。既存のシリンジ製剤中、最も総ヨード量が多い製剤となり、肝臓3D-CT撮影、全肝濃染などでの有用性が期待される。 本ランチョンセミナーにおいては、肝臓領域のダイナミックCTに関し、イオメプロール350濃度製剤の新適応を含め紹介する。 |
003 | ランチョンセミナー バイエル薬品 | |
「Gd造影剤のSafety Review」 | ||
多々井 久徳 | バイエル薬品株式会社 診断薬事業部 学術企画 学術情報 課長 | |
【概要】本邦では細胞外液性のMRI用造影剤であるマグネビストをはじめとし、複数のガドリニウム製剤が臨床応用されています。マグネビストは、1988年にドイツではじめて発売が開始されて以降、欧米をはじめとする国々にて臨床応用され、これまでに世界の約100カ国以上において承認を得ています。そのため、本剤は、既に6900万症例以上の臨床使用の実績に基づくデータが公表されています。これらの安全性情報の結果、本剤投与後の主な副作用症状としては蕁麻疹、嘔吐、発疹などの症状が見られ、その全体の副作用発現率は0.02%未満というものでした。一方、副作用症状の中には、発現頻度は低いものの、ショック、アナフィラキシー様反応といった副作用症状も報告されています。 また近年、複数のガドリニウム製剤における投与後の副作用症状として、NSF(Nephrogenic Systemic Fibrosis, 腎性全身性線維症)が報告されています。NSFは、初発症状として疼痛、掻痒感、腫脹、紅斑が通常下肢から発症する疾患とされていますが、1997年に初めて確認された新しい疾患であり、治療法が確立しておらず、その病因についても明らかとはなっていません。特に、重篤な腎機能障害のある患者の場合、NSFはガドリニウム製剤投与後に発症し得る症状であることが認識されつつあり、そうした患者へのガドリニウム製剤の使用には適応判断が必要と考えられます。海外の学会であるACR (American College of Radiology)の造影剤マニュアルでは、NSF発症のリスクを考慮し、CKD ステージ4/5(eGFR<30)で非透析患者に対するガドリニウム製剤の投与は避けるべきことを推奨しています。 今回、ガドリニウム造影剤の適正使用を目的とし、マグネビストを中心とした安全性情報について紹介します。 |
004 | ランチョンセミナー 伏見製薬梶A堀井薬品工業梶A 潟Jイゲン | |
「消化管撮影認定技師制度の動向と対応に向けて ー更なる画質向上とX線診断の成立する画像精度管理のためにー」 | ||
柏木 秀樹 | 湯川研一消化器クリニック | |
【概要】今日、消化管検査は内視鏡検査の著しい進歩により内視鏡に移行していると言っても過言でない。消化管造影検査の衰退は検査に携わっている放射線技師が良く判っていることである。これらの原因を作ったのが我々消化管造影検査に従事する放射線技師の危機感、すなわち意識レベルの低さが技術格差を生む大きな原因となっている。 現在、唯一の消化管認定技師は日本消化器がん検診学会が発行している認定のみであるが、これらも筆記試験のみで技術面についての試験がなされていない。『救命しうる胃癌の早期発見』国民に信頼される造影検査となるには技術格差をなくすことが必要不可欠な問題となってきている。 昨年2月に開催された日本消化器画像診断情報研究会仙台大会にて『消化管撮影技師の未来は』というタイトルで日本消化管画像診断情報研究会、日本がん検診学会放射線技師部会、日本消化管画像研究会、胃X線検診制度管理研究会の4団体の研究会が討論会を開催し、消化管造影検査の技術格差を無くしレベルアップするために4団体が消化管専門認定技師の必要を訴え消化管専門認定技師の養成に協力することが確約された。尚、今年2月の日本消化器画像診断情報研究会東京大会において、4団体も検定試験を日本消化器がん検診制度管理評価機構(日本消化器がん検診学会の認定試験が平成23年より、昨年NPO法人となった日本消化器がん検診制度管理評価機構に移行することに伴い)で受験することに決定した。 これに伴い、各研究会は都道府県に消化管専門認定指導技師を置き、研修会、講習会を開催し指導していくことが必要であるとの見解から現在、人選を行っている状態である。また、研修会、研究会は単独もしくは4団体の共同開催も視野に入れて行動していくが、都道府県で行われている研究会の協力も必要不可欠である。研修会、講習会で使用されるマニュアルも各研究会でばらつきのない統一したマニュアル作成を現在行っている段階である。 消化管撮影に携わっている放射線技師の意識改革こそ大きな力となって、国民が安心して検査を受けられる、これが将来の消化管造影検査が生き残る道であり、そのためには消化管専門認定技師が必要不可欠なものであると考えている。 |
005 | ランチョンセミナー 富士フイルムRIファーマ(株) | |
「「もの忘れ外来」における脳血流SPECTの有用性」 | ||
吉岩 あおい | 大分大学医学部附属病院 総合診療部 | |
【概要】認知症患者は現在170万人余りと増加の一途を辿っており, 65歳以上の10人に1人である。認知症の最大の危険因子は年齢であり, 進行を抑え介護負担を軽減するために早期診断・早期治療が必要である。
認知症の原因疾患は多岐にわたる。最も多いのは変性認知症であり, アルツハイマー型(Alzheimer's disease; AD), レビー小体型(Dementia with Lewy Bodies; DLB), 前頭側頭型(Frontotemporal Dementia; FTD)がある。 認知症の早期診断および病型診断に脳の機能診断である脳血流SPECTが有用である。「アルツハイマー型認知症の診断・治療ガイドライン」にも問診, 神経心理検査, 血液検査, 頭部CTやMRIによる海馬の萎縮などの形態診断とともに, 脳血流SPECTで血流低下部位を確認し診断を行うことが推奨されている。 早期診断に極めて有効とされるのが脳血流SPECTと脳脊髄液検査であり, 保険適用があるのはSPECTのみである。 画像統計解析法としてeasy Z-score imaging system(eZIS)は, Statistical Parametric Mapping(SPM)を基本とし, 正常画像データベースとの統計解析を, Zスコア〔(正常群平均ボクセル値−症例ボクセル値)/(正常群標準偏差)〕で示すものである。 脳血流SPECTにおいて画像統計解析が最も用いられている疾患はADであり, 初期AD診断支援用としてeZIS疾患特異領域解析がある。記憶障害はあるが, 生活に支障のないMCI(Mild Cognitive Impairment: 軽度認知機能障害)はADの前駆状態とされ, 1年後には12%が認知症に移行すると言われている。この段階でADに進行する群では, エピソード記憶の再生に深く関わっている後部帯状回や楔前部での脳血流や糖代謝の低下がみられ, さらに頭頂葉と後部帯状回の血流低下がある場合は, 3年以内にADを発症する例が多いという報告がある。またADの治療薬である塩酸ドネペジルは, 早期に投薬を開始すれば, 中核症状である認知機能障害の進行を抑え, 特に前頭葉の血流改善効果が報告されている。 人口の高齢化に伴い, 脳血流SPECTが今後検討を重ね, 認知症の超早期診断, より確実な鑑別診断, 治療効果判定に役立つことが期待される。 |
006 | ランチョンセミナー ジェイマックシステム | |
「情報技術を生かす:医療連携、遠隔診断、e-learningへの応用」 | ||
松尾 義朋 | イーサイトヘルスケア株式会社 代表取締役(放射線科専門医) | |
【概要】わが国の人口当たりの放射線科医の数は先進国中、最低である。一方、CT,MRIの人口当たりの設置台数は世界一である。発生する画像診断業務の量に対して、放射線科医がいかに少ないかを物語っている。さらにモダリティの急速な進歩に伴い、画像診断業務は増加の一途である。放射線診断医は膨大な業務に圧迫され、疲弊している。放射線科にも医療崩壊の危機が迫っている。日本の医療は放射線診療に支えられていると言っても過言ではない。放射線科医の疲弊する原因は単なる業務量の増加のみではない。放射線診断医の守備範囲は広く、一人の診断医で全てをカバーすることは困難である。しかし、確保できる放射線診断医の数に限りがあるため、本人の得意、不得意に関らず、多種多様な読影業務に対処しなくてはならず、結果的に非効率的な状況を生むと同時に、放射線科医の悩みの種となっている。 一体、解決の方法はあるのだろうか?国も医師不足対策にようやく重い腰をあげ、医学部の定員増を決定した。しかしながら、焼け石に水としか言えない増員で、極端に少ない放射線科医の不足を補うための有効手段とは思えない。このような状況を改善する手段として、情報技術の応用による人的資源の有効利用を提言する。画像ネットワークによる医療連携の構築は少ない放射線診断医を複数の医療機関で共有することを可能にする。遠隔診断の構築も同様の発想であり、少数の放射線科医で多数の医療機関の診断業務を請け負う仕組みである。さらにこのようなネットワークの複合化により、より大きなネットワークを構築し、多くの放射線診断医が互いの専門領域を補い、互いを高めながら診断業務に従事できる環境作りが必要と考える。 もっとも、このような仕組みは放射線科医の効率的な利用には役立つが、絶対的な読影医の不足が解消できる手段とはなりえない。最終的な解決として、読影業務の役割分担を見直す必要があると私は考える。撮像現場の診療放射線技師による読影支援を期待したい。放射線技師の読影スキルがアップすることで、医療の質がどのように変わるか、また、その実現にはどのような教育体制が有効か、私なりの考えとアイデアを述べさせていただく。 |